シマノESSA

シマノESSAは、8速のグループセットです。2024年4月に発表され、2025年1月にドロップハンドル用シフター、つまりSTIが追加されました。ただしシマノのラインナップでは、位置付けが曖昧なところもあります。品番に「U」が入っているので、これまでの「R(ロード用)」、「M(MTB)」とは異なる路線です。Uはユーティリティーの略ではないかと思います。シマノとしては、RやMをロードとMTBのレース用途に特化し、それ以外を一般用途としてまとめようとしているのでしょう。一般用途の9速から11速のコンポはCUESというグループセットです。こちらも品番は「U」です。CUESは新しい設計で、これまでのシフターやリアディレーラーとの互換性がありません。これに対して、ESSAはこれまでの8速と互換性があります。品番にUを使いながら、なぜ8速をCUESとは異なるESSAとしたのか、一見不可解に見えます。

CUESで面白いのは、9速から11速まで、スプロケットのギアピッチ(各ギア板の間隔)が同じだということです。発想の転換です。これまでは、フリーボディの幅(=スプロケットの幅)を変速段数で割った値がギアピッチでしたが、CUESではギアピッチを先に決めてしまい、そのギアピッチでギアを積み重ねてスプロケットを作ります。なので変速段数によってスプロケットの有効幅が異なります。ギアピッチが同じなので、RDの倍率とシフターのワイヤー引き量は、変速段数に関わらず同一にできます。製造コストを考えても、有利だと思います。チェーンも変速段数に関わらず共用できます。シマノはCUESの仕組みを、LINKGLIDE(リンクグライド)と呼んでいます。

説明はこちら。シマノは、ギアピッチを「スプロケットの間隔」と呼んでいます。
https://si.shimano.com/ja/cues/technical-assets-tips

技術的には、8速もCUESと同じ仕組みにできるはずです。そうすればラインナップもすっきりします。でもシマノは8速についてはこれまで通りの規格を残しました。葛藤はあったはずです。でもぼくはこれまでの8速を残したのは正解だったと思います。8速は、シマノのコンポの最下位のグレードと言われています。でも実際にはシティサイクルやクロスバイク用の6速や7速のコンポも存在し、それらを含めて考えた時、8速は汎用部品が使える最上位のグレードとも言えるわけです。6/7/8速は、JIS規格の3/32のチェーンが使えます。9速以上のチェーンは、メーカーの独自規格になります。なので8速はこれからも存続するはずです。

8速コンポは、CLARIS、ALIVIO、ACERA、ALTUSがあります。このうちCLARISは、ロード用コンポとして残っています。ALIVIO、ACERA、ALTUSは、9速のラインナップもあるので、9速用はCUESに統合されるかもしれません。そうなると8速用の受け皿として、ESSAが用意されたという推測もあり得ます。将来的にはグレードの名称は変わるかもしれませんが、8速のこれまでの規格は今後も残ると思います。

CLARISとESSAは、変速関係の規格が同じです。つまりパーツの混在ができます。ディスクブレーキ・ロードのBasso Marteをシマノ8速で運用しているので、たとえばリアディレーラーにESSAを使ったらどんなメリットやデメリットがあるのか、というのがぼく自身の関心事項です。でもネットで検索しても、ESSAを実際に使ってみたという情報がほとんどないのです。最近グラベルがもてはやされているので、リアで40Tとか45Tが使える8速のシステムということで、試してインプレを上げてくれる人がいるかと思ったのですが、いません。そもそも需要がないのでしょうか。もちろん街中で見かけたことはありません。グラベルを走る人は、9速以上を使うのかもしれません。あるいはシマノではなくMicroshiftを使うという選択肢もあるので、ESSAは価格的にメリットがないのかもしれません。

そういうわけで自分で試すしかないと思い、ESSAのリアディレーラー、RD-U2000GSを注文しました。送料込みで6000円というのが相場です。8速用としてはけっこういい値段がします。ちなみにCLARISのRD-R2000GSは、4000円以下で買えます。注文したのはいいのですが、メーカーにも在庫がないということで、届いたのは3ヶ月後でした。人気がありすぎて在庫がないのか、逆に人気がなさすぎて、ある程度まとまった量の注文が入ってから作り始めるのか、そのあたりはよくわかりません。

RD-U2000GSの重量は364gです。一方CLARIS、RD-R2000GSは274gです。かなりの重量増です。見た目も無骨です。手に持ってケージを引っ張ると、バネが強いというのがわかります。バネの強さでチェーンの暴れを抑える意図でしょうが、シフトダウン時のシフターの操作が重くなることが懸念されます。

RD-U2000GSのスペックです。
最大フロント歯数差:0T、トータルキャパシティ: 34T、最大ロースプロケット:45T、最小ロースプロケット:45T、最大トップスプロケット:11T、最小トップスプロケット:11T
要するにフロントシングル専用、リアスプロケットは11-45Tのみということです。ここは気にせずに進めることにします。

トップギア(12T) チェーン:106リンク
ローから2枚目(28T) チェーン:106リンク

とりあえず取り付けてみました。スプロケットは12-32Tです。チェーンは、それまで付いていたのをそのまま使うので、106Lです。すぐに気づくと思いますが、ガイドプーリーとスプロケット(ギア)が離れすぎです。これはRD-U2000GSがリア45T用のディレーラーだからだと最初は思っていました。でもそんな単純な理由ではないと後で気づきました。とりあえず、この状態で試走しました。RDのバネが強いので、シフトアップはかなり操作に力が必要です。でもそれだけではなく、そもそも変速性能が落ちます。シフトダウンだけでなく、シフトアップもです。ガイドプーリーとスプロケットがこれだけ離れていたら、変速性能が落ちるのは当然でしょう。それと通常ならローギア(32T)まで入るはずですが、チェーンの長さが足りずに、28Tまでしか入りません。これもガイドプーリーとスプロケットの距離に起因します。一方でメリットは、トップギアでもチェーンの暴れがないこと。意図しない大きな段差を踏んでしまったような場合を除けば、トップでもチェーンはチェーンステーに接触しません。チェーンのテンションが高いためか、チェーンがギアにしっとりと絡む感じで、走行音が静かです。

スプロケットの裏から(左側から)見た画像

ガイドプーリーとスプロケットの距離ですが、これはチェーンの長さによって変わります。RD-U2000GSのようなシングルテンションのディレーラーの場合はわかりやすいのですが、チェーンが長くなるとチェーンのテンションが下がり、ガイドプーリーはスプロケットに近づきます。反対にチェーンを短くするとチェーンのテンションが上がりガイドプーリーはスプロケットから離れます。RD-U2000GSはテンションのバネが強いので、それまでのチェーン長さのまま使うとチェーンテンションが上がり、ガイドプーリーとスプロケットの距離が大きくなってしまうということです。これまで最大34Tまでのスプロケットしか使ったことがなく、リアディレーラーもそれに合わせて最大34T用までのものしか使ってこなかったので、チェーンテンションでガイドプーリーの位置が変わってくるというのは死角でした。今回RD-U2000GSを試したのも、45Tのスプロケットが使いたいからではなく、34Tや32Tのスプロケットで実用になるかどうかというのが動機でした。この場合チェーン長さは、34Tで合わせると106Lですが、ガイドプーリーの位置を考慮すると、45Tで合わせなければいけないということになります。フロント38T、リア45T、チェーンステー長425mmで計算すると、チェーン長さは112Lになります。

トップギア(12T) チェーン:116リンク
ローギア(32T) チェーン:116リンク

手元に予備のチェーンがあったので、116Lを切らずにそのまま使ってみました。計算値の112Lよりさらに4リンク長くなります。装着状態は写真の通りです。ガイドプーリーがスプロケットに近づき、まだ距離は大きいものの、見慣れた位置関係に近づきました。左の写真がトップギア(12T)、右がローギア(32T)です。116Lでこの状態ですから、112Lではガイドプーリーとスプロケットの距離はこれより大きくなります。逆にチェーンを長くすればガイドプーリーとスプロケットは近づきますが、おそらく116Lが限界です。これ以上長くなると、チェーンを後ろに引ききれない(=テンションがかけられない)からです。ケージを手で後ろに引っ張ったときの余裕がもうほとんどありません。

ローギアまで入るようになり、変速性能は前よりは良くなりましたが、満足できるレベルではありません。シフトダウンは、操作の重さは気にならなくなりましたが、確実に次のギアに入るとは限りません。確実に入れようと思ったら、2段シフトダウンして、すぐに1段シフトアップして戻す必要があります。シフトアップの方は確実にできますが、変速スピードは遅いです。あと走行時に音鳴りがするギアがあります。チェーンがギアと擦っています。構造上の問題かどうかはよくわかりませんが、ガイドプーリーの向きがギアと平行ではなくて実際には斜めになるので、調整がシビアというか、実際はこの音を消すのは難しいと思います。

112Lは試していませんが、116Lの時よりもガイドプーリーがスプロケットから離れることになるので、仮に11-45Tのスプロケットを使ったとしても、変速性能の向上は見込めません。ロードバイク的な機敏な変速は無理でしょう。大きなローギアを使う場合のセッティングは、難易度が高いというのを痛感しました。それがわかったというのが今回の収穫です。今のところ45Tとかいう大きなギアを使うつもりはないので、ESSAのディレーラーを取り付けておく意味はありません。ということでCLARISのRD-R2000GSに戻します。

シャドー型といいながら、外への出っ張りは大きい。

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